日本発祥とされる打鍼術(だしんじゅつ)について書いています。
打鍼術(だしんじゅつ)
打鍼はお腹に使う刺さない鍼で、とても心地よい刺激なので子どもも喜んで受けてくれます。先が丸くなった鍼と黒檀の木槌を使っていきます。
現在は刺さないやり方が北辰会の藤本蓮風氏により考案され主流となりつつありますが、本来は金や銀でできた鍼を刺入して使っていました。
現在もスリオロシ型といわれる鋭く尖った鍼を刺すやり方をされている先生や流派もあります。
夢分流(むぶんりゅう)
夢分流の概要
夢分流打鍼術は、お腹に鍼をする事で全身を整える施術方法で、大徳寺の禅僧であった御園夢分斎(みそのむぶんさい)が開祖といわれす。
病気のお母さんを治すために熱心に追求したことから体系づけられたとされます。
夢分流による腹診(臓腑)
夢分流では以下の図ように臓腑が配当されており、以下の図に基づいて診断と治療をおこなっていきます。
主として腹部における「気」や「血」の滞り、緊張、弛緩、空虚、冷え、熱などの異常を確認していきます。
京都大学貴重資料デジタルアーカイブ『鍼道秘訣集 2巻』(京都大学附属図書館所蔵)より臓腑之図のページのみを切り抜きました。
秘伝書『鍼道秘訣集』
伝えられる秘伝書に『鍼道秘訣集』があります。三毒(貪=むさぼりのこころ、瞋=いかるこころ、癡=おろかなこころ)があると良い施術ができないなど禅の要素も多く含まれています。
以下の京都大学貴重資料デジタルアーカイブで全ページを見ることができます。他にも貴重な鍼灸・医学の古典がライセンスフリーで二次利用することができます。
『鍼道秘訣集 2巻』(京都大学附属図書館所蔵)
伝統芸能にみる打鍼術
狂言 神鳴(カミナリ)
室町時代の頃より伝承される狂言の神鳴(カミナリ)という演目では、空から落ちてしまい腰を痛めたカミナリ様に通りがかったヤブ医者が鍼治療を施すシーンがあります。
腰を痛めたところを槌で鍼を刺すという所作がでてきます。このことから室町時代には、鍼の施術に槌を使うことも珍しくはなかったのではないかと考えられます。
打鍼術の施術
蓬庵の打鍼具
打鍼で使う槌(つち)は黒檀で作られたものが多いです。市販のものもありますし、職人さんに1本の木から切り出して作ってもらった槌もあります。
槌(つち)は黒檀で作られたものが多いです。鍼は金、銀、銅、真鍮、金メッキなどのものを使います。
オーダーメイドで鍼屋さんに作ってもらったり、自身でも作ったのですが、今は青木実意商店で作ってもらった純金の鍼と、東急ハンズで買った棒から削り出した真鍮の鍼をよく使います。
銀の鍼は「気」の動きが速いため、「真鍮」を使う方が安全と師匠からならいました。
火曳之鍼(ひびきのはり)、下腹部にあるツボに純金の鍼を軽く当てて(槌で叩いて行う場合もある)、上部の「気」を下にひきおろします。この鍼は他の素材でも大丈夫ですが金の鍼が力が強く接触の時間も短くすむように思います。
上腹部の緊張感の緩和や呼吸が大きくなることを目安に施術します。
この曳(ひく)は、ノコギリや地車(だんじり)をひくときに使われる曳(ひく)です。ぐーっとしっかり自分の側に引っぱってくる印象を受けます。
上実下虚(じょうじつげきょ)という体の下部(下焦)の「気」が不足して上部に「気」があがったり停滞している状態のときに有効です。
体の下部(下焦)が無力で力がないと「気」が上がりやすくなります。気が上にあがているときには胸から上の症状がでやすくなります。
火曳之鍼(ひびきのはり)は打鍼術の効果を左右する重要な鍼です。
原文には、産後の血暈(けつうん)トテ子産(うみ)テノ後 目眩(めまい)ノ来ル日(とき)とあり、産後に目眩(めまい)がするときによいとされています。
槌で叩くときの振動と音がとても心地の良い施術方法です。
施術風景(大人)
軽快なテンポでお腹の邪気をはらっていきます。
施術風景(小児)
動画の30秒頃より打鍼術です。心地よいので赤ちゃんでも嫌がることはありません。モデルは生後7ヶ月で、便秘と乳児湿疹の改善を目的に小児はりにきています。
蓬庵が所蔵する関連文献
鍼灸抜粋大成 岡本一抱
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甲斐國徳本多賀流 永田徳本
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打鍼術を動画で学ぶ
打鍼術って?
打鍼術を学ぶ機会はあまり多くありませんので、私が習ったことを少しずつ動画にしています。
まずは槌の素材による音の違いを感じてみてください。
打鍼術を実践する上で大切な手のことをはなしています。
打鍼術ではお腹をどのようにみていくのかをはなしています。
ひとつ前の動画では不十分だったことの補足です。
夢分流臓腑配当図PDFデータ
https://yomogian.info/wp-content/uploads/2021/01/afe5747fe44c9c5b5d535eb16466e22c.pdf