昭和の名灸師と言われる深谷伊三郎先生の深谷灸法の紹介です。
深谷灸法
私と深谷灸法
私がはじめて深谷灸法とであったのは大学1年生の冬でした。ヒヨコ育成会という新米鍼灸師の勉強会の学生スタッフとして参加させてもらい、深谷灸コースに参加させてもらったのがはじまりです。
ヒヨコ育成会では深谷灸法の第1人者としてしられる福島哲也先生の指導を受けました。
それまではお灸が効くという印象があまりなかったのですが、福島先生のお灸を受けたときに、全身に響きわたるような気持ちの良いお灸の熱さに衝撃をうけました。そして、何より治療効果が高いということでした。
まだまだ学生の未熟者でも、それなりの効果をだせることが、深谷灸にはまるきっかけとなりました。卒業した現在でも、深谷灸法は治療での私の大きな武器の1つとなっています。
昔ながらの火傷が残るやり方のお灸ですが、治療効果が高く非常に有効な灸法です。
深谷灸法
深谷灸法とは、昭和の名灸師といわれた故・深谷伊三郎先生が40年有余年の臨床で中で、『黄帝明堂灸経灸』や『名家灸選』などを研究して構築した灸法です。
その特徴として透熱灸・遠隔取穴・少穴多壮・特効穴、を活用するとともに、灸熱を緩和するために灸熱緩和器として竹筒を使用するのが特徴です。また、深谷灸法の象徴と言うべきものに「灸法の基本10項」があります。
深谷灸法の特徴の1つである竹筒です。写真は深谷先生が晩年まで使われていた実物です。うつっている手は私です。
用語説明
透熱灸‥皮膚に直接するお灸で、火傷が残ります。
遠隔取穴‥悪いところにお灸をするのではなくて、離れたところにお灸をします。悪いところにお灸をしたから効くというものではありません。
少穴多壮‥使うツボが少ないかわりに、お灸の数を多します。
特効穴‥古来からお灸をすると効くと言われているツボで、家伝や秘伝のものも多くあります。
竹筒(灸熱緩和器)‥お灸の熱さを緩和する目的と、治療に有効なツボをさがすときに竹の筒を使います。
灸法の基本10項‥深谷先生が長年の臨床の中からみいだされたお灸を効かすためのポイントです。お灸に限らず、鍼灸師が治療をする上での心得と言えます。
灸法の基本10項目
1、経穴は効くものではなく、効かすものである。
2、成書の経穴部位は方角を示すのみ。
3、経穴は移動する。
4、名穴を駆使して効果を挙げよ。
5、少穴で効果を挙げるべきである。
6、反応の無い穴は効き目が少ない。(効き目の出ないものは出すようにする。)
7、そこが悪いからと、そこへすえても効果は無い。
8、名穴であっても、ただそれだけに効くのではない。
9、灸炷の大小壮数は患者の体質に合わせよ。(熱くないところは熱くなるまですえる。)
10、経穴は手際よく取穴せよ。
深谷伊三郎(ふかやいさぶろう)
深谷伊三郎(ふかやいさぶろう)
1900~1974年 東京生まれ
肺結核で5年間病床に臥していたが、灸治療で劇的に回復したのをきっかけに鍼灸の道に進んだ。
『黄帝明堂灸経灸』や『名家灸選』の研究など多くの業績を残しており、日本を代表する鍼灸師の1人である。「鍼灸治療雑誌」を20年間刊行し、「鍼灸之世界社」を主宰しており、昭和49年急逝されました。
表作に『名家灸選釈義』があり、現在でも多くの鍼灸師が治療の際に使用しています。また、息子の新間英雄氏はクラシックギター奏者、孫は落語家の立川志らく氏です。
箱は紙を貼り重ねて作られており、深谷先生が自分で作られたものだそうです。
新間英雄氏に大阪の鍼灸臨床の勉強会ヒヨコ育成会(現:臨床家育成会)にて深谷灸法の指導をして頂きました。父親(深谷伊三郎)に言われてよくお灸をされていたとのことで、お灸の腕前はプロ級です。
深谷灸法関連書籍・DVD
『お灸治療の実際-熱くないすえ方と病気別特効穴-』 深谷伊三郎
『お灸で病気を治した話』1~10巻 深谷伊三郎 *
『家伝灸物語』 深谷伊三郎 *
『取穴法のすべて』 深谷伊三郎
『名家灸選釈義』 深谷伊三郎 *
『灸法医典』 深谷伊三郎 *
『名灸穴の研究』 深谷伊三郎 *
『現代灸治療の研究』 深谷伊三郎 *
『図説 深谷灸法』 入江靖二 *
『深谷灸による病気別症候別灸治療-患者にからだに聞け』 福島哲也 *
『深谷灸法実践講座』 福島哲也
*印がついている書籍は蓬庵も所蔵しています。
蓬庵が所蔵している江戸時代に編纂された『名家灸選』の原著、深谷先生はこの本を研究され『名家灸選釈義』を書かれました。